V字カッターの製作(2) 2009.05.30(土)〜 /
著作者名: 中野 良知 作成開始: 2009.05.18(月) 更新 : 2009.05.28(木) 「カッターの製作」を追加。 : 2009.05.29(金) 「画像資料」と「安全上の注意」を追加。 : 2009.05.30(土) 「カッターの取り付け」を追加。 : 2009.05.31(日) 「切削シミュレーション」を追加。
概要 プリント基板用パターンカッターの検討・製作のレポートです。 深く切り込んだ場合でも幅の狭い切削が出来るようになりました。 目次 1. カッター形状 1.1. すくい面 1.2. すくい角 1.3. 逃げ代 1.4. 逃げ角1 1.5. 逃げ角2、3 2. カッターの製作 2.1. 原形削り 2.2. 仕上げ・再研磨 3. カッター研削機 4. 画像資料 4.1. 60度カッターの刃先 4.2. 30度カッターのすくい面研削 4.3. カッターの取り付け 4.4. 切削テスト 4.5. 負すくい角によるバリ 4.6. 切削シミュレーション 4.7. 単眼鏡 5. 安全上の注意 1. カッター形状 1.1. すくい面 左:60度カッター 右:30度カッター V字の右辺が切り刃。 左辺は逃げ代研削で点線から実線に平行移動(50μ)。 底辺に対して30度の逃げ角を設定。 1.2. すくい角 すくい面をカッターの中心軸から10μ(0.01mm)研磨し、5.74度のすくい角を成形。 *すく角が負になると切削時にバリが発生します。 画像資料の「負すくい角によるバリ」を参照。 1.3. 逃げ代 切削径0.2mm部分の断面図 太い実線:18度ごとに5μづつ逃げ代を増やして研削。 細い実線:逃げ代を研削する前。 1.4. 逃げ角1 すくい面の後ろ側の逃げ角。 刃先角は78度。 1.5. 逃げ角2、3 底辺切削の逃げ角2 逃げ角2の裏側の逃げ角3 2. カッターの製作 先端角60度のカッターの製作手順です。 先端角30度のカッターの場合は、円錐研削の時に砥石に対してカッターの傾きを15度 にします。 2.1. 原形削り 水色: 粒度#400ダイヤモンド電着砥石 緑色: 粒度#1200ダイヤモンドボンド砥石 灰色: 超鋼のカッター材。超鋼ロータリーバーを流用。 1) カッターを30度傾けて取り付け。 2) 先端が尖るまで、円錐を研削。 3) カッターと砥石の平行出しを行い、カッターをボルトでロック。 4) 円錐の頂点まで、すくい面を研削。 粒度#1200ダイヤモンド(ボンド)砥石に交換。 5) すくい角研削。円錐の頂点から10μ。 2.2. 仕上げ・再研磨 粒度#1200ダイヤモンドボンド砥石を使用。 6) すくい面と砥石の平行出し。 目盛り0で、カッター回転用ツマミをカッターに固定。 7) カッターを30度傾けて取り付け。円錐の頂点が出るまで研削。 8) カッターを108度位置に回転後、5μ研磨し逃げ角1を成形。 9) カッターを更に18度回転した後、5μの逃げ代を研削。 10) 270度まで18度ごとに逃げ代を5μづつ増やして研削。 11) カッターの傾きを60度に変更。 カッターは252度の位置でボルトを締めてロック。 12) 先端を50μ研磨して、底辺の逃げ角2、後ろ逃げ角3を成形。 3. カッター研削機 砥石は4000rpmで回転。 粒度#1200 ダイヤモンド砥石(ボンド)を装着。 粒度#400 ダイヤモンド砥石(電着)で荒削り。 カッターホルダーは、砥石の研削面に対して0度、15度、30度に傾ける事が可能。 ホルダーベースは、砥石の研削面と平行に、0mm、5mm、10mm移動可能。 画像は刃先角60度カッター用に30度傾けたところ。 カッター回転角はツマミの目盛りとカッターホルダーのスリットを合わせる。 カッター軸受けのがたつきはボルトの締め付けで調整。 砥石の回転軸と平行にカッターを送るスライダー。 送りネジはリード1mm。 ダイヤルは最小目盛り0.05mm、プリセット可能。 スライダーにホルダーベースを取り付け。 青色の部材は、加工前のカッターホルダー。 目盛り板の最小目盛りは0.01mm。 逃げ代研削では中間0.005mm(5μ)を使用。 4. 画像資料 4.1. 60度カッターの刃先 左:パターン切削前 右:パターン切削後。切削長=4979mm。 カッターの材質:超鋼のロータリーバーを加工。 4.2. 30度カッターのすくい面研削 左:#400ダイヤモンド電着砥石で成形。 右:#1200ダイヤモンドボンド砥石で研磨。すくい面、逃げ角などを成形。 4.3. カッターの取り付け フライス盤のスピンドルの芯振れを測定します。 カッターのシャンクで一回転の振れ幅を測定。 振れの最大位置をフライス盤のスピンドルに油性マジックでマークします。 カッターの切刃をマークに合わせて取り付けます。 参考) ピックテスタの振れ幅80μからスピンドルの偏芯は40μです。(2009.05.30) 4.4. 切削テスト □の一辺は5mm。 切込み 溝幅 刃先角 ---+---------+---------+--------- 左 0.15mm 0.29mm 30度 中 0.07mm 0.25mm 30度 右 0.07mm 0.33mm 60度 スピンドル回転数=約4600rpm。 4.5. 負すくい角によるバリ □の一辺は5mm。 すくい面の厚み1.54mm(カッター直径3mm)で、すくい角=-23.6度(切刃半径0.1mm)。 30度カッター。 切込み量=0.07mm。 スピンドル回転数=約4600rpm。 すくい面の厚みはカッターの半径よりも僅かに薄くし(10μ)、すくい角が負にならな い様にします。 4.6. 切削シミュレーション 切削半径 :0.05mm(60度カッター底辺部分) カッターの回転数:4600[rpm] 送り速度 :230[mm/min] カッターが1/2回転した時に、カッターの最小半径(底辺切削径)の1/2までワークが 移動する場合を想定。 移動距離=底辺切削半径の1/2=L[mm] カッターの回転数=N[rpm] カッターが半回転に要する時間 T=1/(N*2)[min] 送り速度=F=L/T=L*N*2[mm/min] カッター 底辺切削半径 移動距離 回転数 ---------+---------------+----------+----------- 60度 0.05mm 0.025mm 4600rpm 30度 0.07mm 0.035mm 4600rpm 60度カッター: F=0.025*4600*2=230[mm/min] 30度カッター: F=0.035*4600*2=322[mm/min] 4.7. 単眼鏡 倍率 作動距離 -----+------------ 20倍 7cm 11倍 26cm マグネットベースに取り付けて、逃げ角2,3の研削(50μ)の時にカッターの先端と 砥石面との当たりを単眼鏡越し見て確認します。 研削中に飛び散る超鋼の粒子から距離を保って、粉塵から作業者を守るためにも有効 です。 5. 安全上の注意 砥石から10cm以上離れたところでも霧状の黒い粒子が飛び散っていく様子が観察でき ます。 粒子は片栗粉のように微細です。 部屋の換気、マスクや防塵眼鏡の着用、半田煙吸引機や掃除機で飛び散った粒子の 捕獲、手洗いなどをして、超鋼の粒子が体内に入らないようにます。 集塵箱 砥石の回転で線香の煙が集塵箱に吸い込まれてゆく実験。 簡単な構造でも、集塵箱の中は超鋼の粒子で真っ黒です。 単眼鏡を使用し、研削機から顔を離して研削します。
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